下肢静脈瘤の症状と治療

日帰り手術による静脈結紮術と硬化療法

足のむくみ、色素の沈着、変色、皮膚のただれが気になりませんか?
よく足がつったり、こむら返りを起こすのも下肢静脈瘤の症状です。血管が太く浮き出ていたり、網目状に浮き出ている場合には治療が必要です。

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下肢静脈瘤とは?

よく「血管が浮いている」と言いますが、足(下肢)の静脈が太く浮き出ているものを下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)と言います。静脈瘤はコブ状のものや網目状のものなど、大きく4つのタイプへ分類できます。

1.伏在静脈瘤:ふくざいじょうみゃくりゅう

最も太く拡張したもので、治療を希望して外来を訪れる患者さんの約70%がこのタイプの静脈瘤です。

伏在静脈瘤:ふくざいじょうみゃくりゅう

2.側枝静脈瘤:そくしじょうみゃくりゅう

伏在静脈の枝の部分が拡張したもので、やや細いタイプの静脈瘤です。

側枝静脈瘤:そくしじょうみゃくりゅう

3.網目状静脈瘤

2〜3mmの太さに静脈が拡張したもので、青色の網目状に広がることが多い、細いタイプの静脈瘤です。

網目状静脈瘤

4.クモの巣状静脈瘤

1mm以下の細い静脈瘤でクモの巣のように広がります。最も細いタイプの静脈瘤です。

クモの巣状静脈瘤

下肢静脈瘤の症状

たくさん静脈瘤ができていても全く症状のない人もいます。しかし、静脈瘤ができると足がむくむ、だるい、重い、痛む、ほてるなどの症状がよくでます。足の筋肉がつる、いわゆる「こむら返り」も起こりやすくなります。症状が重くなると湿疹ができたり、色素沈着、潰瘍ができます。同時に静脈瘤は美容的な悩みの原因にもなります。

下肢静脈瘤ができやすい人

静脈瘤ができやすい条件、つまり危険因子としては下記の表にあげたものがあります。まとめてみると、お母さんや姉妹に静脈瘤がある女性にできやすく、妊娠をきっかけに静脈瘤ができ、立ち仕事に従事したり、年齢が進むにつれて病状が進行すると言えます。

下肢静脈瘤の治療

静脈瘤の治療には、壊れた静脈の弁を手術で治す弁形成術という方法もありますが、現在よく行われている治療法は弾性ストッキング、ストリッピング手術、静脈結紮術(じょうみゃくけつさつじゅつ)、硬化療法です。また、レーザーやラジオ波による治療法もあります。たてやま循環器内科外科では静脈結紮術と硬化療法を併用した日帰り手術を行っています。

弾性ストッキング

弾性ストッキングは、血液が足に貯溜しないように静脈瘤を強く圧迫するもので、弾性ストッキングをはくと多くの患者さんが「足が軽くなった」と喜ばれます。実際、弾性ストッキングにより静脈環流が改善することが証明されています。

しかし、弾性ストッキングは静脈瘤を治すためのものではありません。静脈瘤を根本的に治すためには、ストリッピング手術、静脈結紮術、硬化療法が行われます。尚、手術後に弾性ストッキングを使用することもあります。

ストリッピング手術

ストリッピング手術は、100年も前から行われている手術です。手術は、大伏在静脈あるいは小伏在静脈を引き抜き、さらに小さい皮膚切開により静脈瘤を切除するもので、手術の傷跡は残りますがどんな静脈瘤でも確実に治療できます。全身麻酔や下半身麻酔で行うため、1週間前後入院して手術する施設が多いのですが、最近では日帰り手術など短い入院期間で行う施設も増えています。

静脈結紮術

静脈結紮術は、皮膚に小さい切開を加え、静脈をしばるものです。これにより血液の逆流を止めてしまいます。よく「血管をしばってしまうと、血液の流れが悪くなってしまうのではないか」と心配されますが、血液は表在静脈よりずっと太い静脈(深部静脈)を流れますので全く支障がありません。

静脈結紮術は局所麻酔ででき1ヵ所約15分です。静脈瘤の状態に応じて1ヵ所から3ヵ所位の結紮術を行います。結紮術は通院で行われることが多く、次の日から元の仕事、日常生活が可能です。
もちろん、すべての人に結紮術が必要なわけではありません。静脈瘤の種類、血液の逆流の強さを考え、硬化療法だけで治療したり、硬化療法に結紮術を加えたりします。

硬化療法

硬化療法は、直接静脈瘤に硬化剤を注射するものです。硬化剤により静脈が損傷され、静脈はペシャンコになってしまいます。つまり、硬化剤は静脈を癒着させペシャンコにする接着剤のようなものです。こうなると、静脈瘤は小さく目立たなくなり血液が溜まらないために、だるさやむくみがなくなります。硬化療法のあと、注射をした部位にしこりや色素沈着がおこりますが次第に薄くなり消失します。

硬化療法に要する時間は1回が10〜15分程度です。尚、75%の患者さんは、1〜2回の治療ですみます。

レーザーやラジオ波による治療

ストリッピング手術や静脈結紮術の代わりにレーザーやラジオ波を用いて伏在静脈を血管内から焼灼する治療法です。まだ健康保険はきかないので、基本的に治療費はすべて自己負担となりますが、侵襲の少ない新しい静脈瘤治療法の一つです。

日帰り手術について

当院では下肢静脈瘤の日帰り手術を行っています。

手術は、処置台に横になっていただき、鼡径部(ふとももの付け根の部分)と静脈瘤に沿って、多くて大腿(ふともも)内側に2ヶ所、下腿(膝下の部分)に2〜3ヶ所に局所麻酔をして、1.5pほど切開し、膨らんだ静脈を直接、糸でしばります。

さらに、手術の対象にならないような細い静脈瘤に対しては、硬化療法を追加します。

注意事項

手術後は、手術部位を包帯で巻きますが、歩行可能です。車の運転や自転車も問題ありません。
当日夜は、麻酔が切れてから手術部位が多少、痛むこともありますので、痛み止めと化膿止め(抗生物質)をお渡しします。
当日は入浴できませんので、前日の入浴をお勧めします。
手術翌日、手術部位の消毒のために再受診していただきます。問題なければ、手術翌日は入浴も可能です。

手術当日の流れ

手術後のスケジュール

日常生活で注意すること

静脈瘤のある患者さんは、症状を軽くさせ、静脈瘤を悪化させないために次のような注意を守ることが大切です。

就寝時の下肢挙上

夜寝るときには、足を心臓より高くして休んでください。

就寝時の下肢挙上